バラエティに富んだSF短編集『無伴奏ソナタ』オースン・スコット・カード
“エンダーのゲーム”の著者オースン・スコット・カードの短編集
こんにちは!就活連敗中のちゅんさんです。
今回紹介するのは“エンダーのゲーム”の著者オースン・スコット・カードの短編集『無伴奏ソナタ』です。
この短編集には“エンダーのゲーム”も含まれています。
もともとは短編だったんですね。知りませんでした。
この本の著者はオースン・スコット・カード一人なのですが、訳者は三人います。そのせいか訳者が変わると作品の雰囲気も変わります。
そして“エンダーのゲーム”のような宇宙SFっぽい作品から少し不思議なおとぎ話のようなものまでバラエティに富んだ短編集となっているのできっとあなたにもお気に入りの作品が見つかると思います。
収録作品
- エンダーのゲーム
映画化されたあの“エンダーのゲーム”の原型です。荒削りな感じはしますがその分、可能性を大いに感じます。これが後に長編、映画化されるのも納得。
- 王の食肉
〈羊飼い〉は不思議な力を持った斧と杖を持って王のために食料を調達します。さてどこからでしょうか?ディストピア小説のような残酷な童話のような話。
- 深呼吸
ある日主人公は二歳になる息子と妻の呼吸がぴたりと一致してることに気がつきます。これが何を表してるのかは読んでのお楽しみ。いや、楽しいお話ではないけれど。
- タイムリッド
タイムマシンを使って悪遊びをする若者たちの話。この話に出てくるトラックの運転手が可哀想でしかたない。
- ブルーな遺伝子を見につけて
作者曰く、「ハードな短編のひとつで、もっともストレートな“ストレート”SFだろう」。私にはイメージしづらく一番読むのに苦労しました。
- 四階共用トイレの悪夢
まさに悪夢としか言いようのない話。なんかジョジョの奇妙な冒険に出てきそうなモノが出てきます。
- 死すべき神々
哲学的なものを感じました。神秘的なSFといった感じでしょうか。
- 解放の時
“世にも奇妙な物語”にありそうな話。作者の妻の夢から構想を広げた作品みたいです。
- アグネスとヘクトルたちの物語
二つの話が並行して語られるのではじめはよくわかりませんでしたが、、よくできた短編です。
- 磁器のサラマンダー
SFというよりちょっと不思議な悲しいおとぎ話のような作品。この短編はふざけてせがんだ妻のための寝物語としてはじまった、らしいです。まじすか!?
この短編集の中で一番好きです。ぜひ一読下さい。
『無伴奏ソナタ』だけでも読んでほしい!
SFを読み慣れていないので読むのに多少時間がかかりましたが、読み終えてみるとこれはなかなか優れた作品集なんじゃないかと思いました。
その理由として一つはバラエティに富んだ作品集であること、同じひとりの作者にこんなに雰囲気やタイプの違う話が書けるのかと驚きました。
アンソロジーと言っても疑う人はいないでしょう。
あと一つは作者があとがきでも言ってるように登場人物がどんなに悲惨な状態になろうと、どれもハッピーエンドになっているからです。
私は悲しい話が嫌いではありません(”いやミス”と言われるのは嫌いですが)。
そしてこの短編集全体に言えることですが、憂いや悲しみを帯びています。なのにハッピーエンドに感じられるという不思議な作品集です。
もしかしたら悲しみと喜びは表裏一体なのかもしれません。
『エンダーのゲーム』は映画化もされてあんなに注目されているのに『無伴奏ソナタ』はあまり読まれていないように感じます。
実際私も知人に紹介してもらうまで知りませんでした。
もしかしたらこれより良い短編集はあるかもしれません。おそらくあるでしょう。
でも“無伴奏ソナタ”だけは読んだ方がいい!とはっきり言えます。
それぐらい“無伴奏ソナタ”はこの短編集の中でも抜きんでています。
ぜひ多くの人に読んでいただけたら嬉しいです。